そのたましいの行き先はどこなのか



ギターが鳴っていた
だれかの弾く心の原画
わたしは導かれて
遠くからやってきた
そこにあるものの正体を
確かめるために

出会っても
結ばれるとは限らない
愛し合っても
添い遂げるとはかぎらない
なにひとつ
確かなものはないこの世で
微笑むくしゃくしゃなほころびが
ふいに
わたしを泣かせるのだった

どうしてここまできたのか
いつもわたしにはわからない
いのちからいのちへ
時代から時代へ
電車さえ乗り継いで
駅から駅へ

いったいなにをしているのか
いつもわたしにはわからない
あなたにもわからないことを
わたしは約束のように繰り返す
そう
ずっと前から
決められた約束のように
ただその通りに

むかし
わたしがひとではなかったころ
あなたに会うために
鳥や魚になったよ
あなたに美しく描いてもらうために
池の蓮になり何度も咲いた
梅になっては
そっと頭上で咲いた

そうむかし
わたしが女ではなかった頃
あなたのくるぶしに触れるやわらかな草になったよ
あなたの愛でるすべての植物や
動物にうまれては
なんども、容易く、死んだ

わたしはいま
ひとにうまれおんなにうまれ
かなわなかった約束を思い出すように
時間を乗り継いでいるのかもしれない
たましいからたましいへ
次の電車が出るまで
ちいさなチケットを握りしめて
改札をくぐり
季節をくぐり

わたしを描いてくれたひとへ
もういちど出会うため
わたしを奏でてくれたひとを追いかけて

そのたましいの行き先は
どこなのか
道連れになれたらいいと思いながら