とりかご朗読会にて
            


おんなのこは
誰にも似ておらず
三様のまなざしで
しずかに啼いた

声をききわけて
茎のほそさにふれる
摘んではいけないと背後から諭され
危うく指を折りました

三様の鬼が
おんなのこのなかには棲んでいます


あぶくのことばを
連ねて
金魚が横切っていく
手を伸ばそうとすると
また
諭される
石を飲み込んだきれいな魚を
わたしは欲しかったのです

三様の石が
おんなのこの腹には沈んでいます


ほほえみのカーテン越しに
ちらと見える
巨人の影
くろねこの忍び足で
どんな裏道も上手に渡っていくけれど
夜はすべて
巨人の影

三様の巨人を
おんなのこは笑いながら背負っています


タタンとかるく地面を蹴って
ほんとはすぐにでも飛び立ってしまえる
とりかごの扉なんて
いつでも
桃色の嘴であけられる
けれど
先に逃がしてあげるのは
声だけ

こんやここで
解き放つのは
声だけ


聡明な小鳥となって
羽ばたいていくその音を
わたしは聴きにきたのです

あたりを旋回して飛んでいったのや
まっすぐ高く上っていったの
尾の先が切った
風の音が
聴こえなくなるまで
耳を澄ましていると

十数羽の小鳥の
ふしだらな羽毛が
厳かに
わたしの膝に落ちてきます










                    '07.2.10 鳥かご朗読会 in ロカリテ
                            <朗読者>
                     井上直子、藤坂萌子、有邑空玖