さいごのひともじが濁点なのは
ずるずる泥で汚した片足を引きずって
歩いているみたいな気がする
あるいは
しりもちで汚れたお尻

あるくたびに
てんてんと
はねていく
残していく
わたしの飛び立ったあと
わたしのいなくなったあと

でもほんとはそんなに面倒なこともなく
あなたを振り返らせるほどの
存在理由もなく
ただ
てんてんが多いだけなんだった
だれか
ハンカチ貸してよ
きれいにぬぐい取れば
なにかが変わるかもしれない

ふっ と
ため息をついて
倒れそうな可憐さで
あるいは
ぷっ と
笑い出しそうな
底抜けの明るさで

ぶっとばす
ぶっころす
ぶっつけほんばん
ぶっちぎり
そんな過激なことは一度だって
わたしの人生にはなかった
ぶなん
ぶあいそう
ぶえのすあいれす
ぶす!
そう言われたこともあった

あなたのくれたハンカチで
きれいにふき取って
ふ にしてみたの
ふなれ
ふにんき
ふしあわせ
ふせっそう
否定形ばかりで
ふー
ちっとも前に進めそうにない

ぶっとんだ自分の顔を
まじまじと鏡で見れば
ぶりりあんと
顔にも濁点がついている

わたしの存在理由を
鏡のひとが教えている
ずるずるお尻にも顔にもおもいっきり
濁点をはね散らかして
あしたもね
生きていく