プリズム



川面に映るまばゆさはまだすこし
夏だった
信じていくということは
角度をかえてみれば
ひどく簡単なことなのに
見るものにとって
大きく違ってしまう
わたしの位置から見える川のひかり
ひかりの
反射の角度


心へ跳ね返るひかりの強度
プリズムの散乱

ぎらぎらのうろこが
川いちめんを覆って
大蛇のようにうねっていく
足の裏でその呼吸をかんじた
あるきながら
横顔をみた


角度がちがう
なまものの感情を持て余して
橋の上から大蛇に放ってやれば
ひとのみに
銀のうろこで覆われて
秋をしずかに生きるか


プリズムの氾濫
見通せないところめがけて
つきすすむ
うつくしい屈折はまるでホログラフィーのように
目の前にあるのに
つかめない
(つかみたいのならそこじゃない


ちがう角度で跳ね返りながら
吸い寄せられてしまう
ひかりのさき
七色の迷いもそのままで
まぼろしごと
抱きしめたい