午前一時



ゆにっとばすの鏡のなかで
髪が伸びていく今年の夏

白っぽい電灯が
ひとつの影を支えている
動き回ったり黙り込んだりする影の背中にも
いっぽんの線が走っており
つなぎめがなめらかに浮き出ているのを
ひとつひとつ確かめようと

自分の手で
影の背中に触れれば
なまぬるく湿るゆびさき
そして電灯を消して影も消してしまえば
ひきかえに
きつく匂い立つ

刈り取ったばかりの川原の草のように
雨上がりの磨き上げられた空気のように
ミュートだった大音量が
とつぜん聴こえだすように


漂流したのではない
わたしは自分の足でここへきた
ひとりで車を出して
ひとりで荷物を運び
自分でテーブルを組み立て
パソコンをつないで

ワンルームの床が
みしりと音を撫で上げる
起き上がりもう一度電灯をつけると
ひとり

足元に
ツレアイのような闇が落ちている