スコール


からだの奥に棲んでいた
一匹の黒蛇が
愛を知る
枯れ葉の奥に隠れたまま
後は
死んでいくだけだった

湿った風の匂いばかり嗅いで
とぐろのなかから見た空は
隠れようもない青ばかり
吸い込まれそうな穴だったあれは
落ちてゆくばかりの巨大な眼
もう温かさも求めずに
ひんやりと黙るだけだった
ねじりきった這いずり後も
遠くぼやけてゆくだけだった

からだの奥に棲んでいた
黒蛇はちいさく鎌首をもたげ
なにか体温のある音を聴いた
ときに渇きながら
ときにずぶ濡れになりながら
音は降り注いだ
見上げる空は湿った雲で覆われて
それはもう重く厚い雲でいちめんが覆われて
ぎらぎら溶けてはなんども浮かび上がる
凍りついた哀しい色を持ちながら
けれどそれは
マグマのような空だった

からまりあい湧き上がる
雲のぶつかる音が胸元でする
からだの奥で発生したスコールが
渇いた枯れ葉を押し流してゆく


からだの奥にすんでいる
ただそれだけの黒蛇だった
はぐれたままの黒蛇だった
後は
死んでいくだけだった
からみつくマグマの味
突き抜けるスコールの痛み
生きているマグマの味
生きているスコールの痛み