暗がり


暗がりを糧に
やってきたもの
沼や湖に棲む
ぬめりのある肌をもつ
いきもののように
地下水の中に棲む
眼を持たぬ魚のように

暗がりは
あたしの中にある
そこで産まれ
適応して 又は進化する
あるいは 退化する
あるいは 消滅する
宇宙にも似て
その果てにあるものは
「自分」なのだと知る

呪いのように思われた
その暗い片隅にいたものは
探し続けた宇宙のはての
つまり
後頭部を持った自分である

暗がりは
静かにそこに在る
淡々とそこに在り続ける
どんなに光に焦がれ
眩しい雲を追いかけようとも

湿った精気を湛えて
暗がりは
混沌として
生命に満ちている