馬鈴薯


スーパーの野菜売り場で
故郷に会った

土で汚れて それは
愚鈍そうにしていたけれど

そんな風にしか
自分を表現できない事は
私には わかった

彼女にとって
得をする情報など
何ひとつ持たない私は
やがて本物の愚鈍面で
作り笑いをしていたにすぎない

そんな自分を憎んだ

だけど 彼は云う
大事なことは わかっている筈だと

その間抜けな表情の下で
君は核心を突いているのだ 
と 云い残して
彼は見知らぬ主婦と共に行ってしまった

どこにも
属さない自分になろうと思ったんだよ
精一杯の 強がりで
だって私は どこにも属していない
故郷にも
この土地にも
どこの方言でもないコトバを喋っている

こだわっているのは
君1人なんじゃないか
云ったろう
本当はわかっているのだと

私の買い物籠の中で
飄々と彼は云う
彼は私なので 私の事がよくわかる

私は彼なので 彼の云いたい事を
知っている