花火大会




                 カンタンな道だった
                 まっすぐ国道沿いを歩いてゆけば
                 幼い子でもたどり着く
                 夏の夜の
                 もう灯りの落ちた商店街を抜けて
                 やがて
                 右手にガソリンスタンドがあり
                 そこの前の広場で
                 ちいさな花火大会は行われた

                 ちいさな     
 
                 アスファルトに立てた花火から
                 ぼうぼうと火がのぼり
                 炎のシャボンがいくつも飛び出す
                 「ドラゴン」の親分みたいなやつが
                 聞き覚えのある店名とともに
                 いっきに空中に噴きだすのを
                 わたしたちは
                 人の頭のうしろから見ていた
    
                 町内の花火大会

                 あれは
                 すぐにわかる簡単な道だった
                 車が通るたびに
                 ジャンプして
                 走り行くその影を一瞬にかわした
                 夕暮れの遊び方
                 いちだいにだいさんだい
                 舗道にはチョークの落書き
                 よんだいごだいろくだい

                 北から南へ単純に一本
                 広い国道は夏の日差しにめらめらと燃え上がり
                 遠くの上り坂をいっそう膨らませた
                 店先の手動の日よけテントの鉄棒を熱した
                 そこで逆上がりをしたんだ
                 くるくるって

                 どこにも迷うはずのない一本道だった
                 隠れようもないあけすけの道を
                 わたしたちは笑って歩いた

                 まっすぐ歩いてゆけば
                 友達はそこにいて
                 ちいさな花火大会は人だかり
                 あんなちいさなしょぼい花火大会が
                 人だかり

                 真夏の
                 けれど秋の迫った夜の道
                 どうしたって行き着けないはずはない
                 パンパンと火花の爆ぜる音がする
                 あのちんけな花火大会の会場へ

                 胸ときめかせて
                 短靴を鳴らして