ある土曜日に




いつものビデオ屋で
あれは
なんの木だったか
名前も知らないけれど

大きな木が
気安く日陰をくれて
立っていた



それだけのこと


記憶する
忘れてゆく


それだけのこと


はがれたアスファルトが
痛々しげ
むき出しの土は
白く乾いて
一体
そこに
なにがあったのか


人は
壁に貼られた
新作の
ポスターを見てる


そこに
なにがあったのか


なんだっけ
そういえば
なんか広くない?


この世から
やさしい日陰がまたひとつ消えた
雨宿りの
大きな枝が消えた


なんだっけ
なにがあったっけ


あたしは
新作のDVDを二本借りて




それだけのこと