眠りに つく




祈りは
通じるよ と
教えてくれたあなたのことばを
だきしめて
だきしめて
丸くなって

擦り切れたタオルを握りしめてはなさない
ちいさな
こどものように
懐かしい匂いのする
ことばのはしっこを吸って
眠りに つく

今夜も
あたしを守ってくれる
いくつかのことばを
枕元に並べてゆくんだ
ほら
子供の頃をおぼえてるよ
持っているぬいぐるみを全部
自分の布団の周りに並べたら
真夜中に目が覚めたって
こわくなかった

もう会うことがなくても
まだ会ったことがなくても
そしていつも会っていても
その人の心から
あたしのもとへとやってきたことばは

きっと
遠い旅をしてきたんだろう
何気なく受け取っているけれど
あなたという命から
あたしという命まで辿り着くのに
時代や宿命までもくぐりぬけ
たくさんの
回り道をしてきたんだろう

あたしに向かってやってきてくれた
それだけで
それだけが
嬉しくて

気の遠くなるような星々の光りのようにして
やっとあたしに届いたことばを
毛布のように頭から被って
目を閉じる

昼には大人で
雑多なことに追われて
いつも忘れてしまうけれど
あなたの祈りが
ちゃんと伝わってきていると
闇の中で感じる
だったら今夜
あなたにも伝わっているんだよね
信じられるんだよ
今ならあたし

もらったいくつものことばを
ぎゅっとだきしめて
だきしめて
まるくなって
あったかくなって
いとしくて
ありがとうって
こどもになって
ねむりながら
おっぱいをさがすくちもとで
すいついて
あんしんして
これでまたあしたも
じぶんをしんじてきっといられる

おやすみなさい