溺死三昧



浴槽で
溺死してみる
20秒


浮き上がって
立ち上がったあたしは
ダサイ詩人になっていた
ダサイ詩人になってやろうと声に出した
薄い胸をさらして
浮かんでいる死体にジャバラのふたをする
それしかもうあたしの生きる道はない


ホラー映画のワンシーンみたいに
石鹸をからだにこすりつける
花の香りがするよ
このまま抱かれたらきっといい匂いがする
ロマンチックな夜に夫はいない


ジャバラのふたから
白い手がのびる
知らないおんなの指がうごく


あたしの右手の人差し指第二関節には
ラケットでできたタコがある
このおんなの指にもおなじタコ
まだ死んでないのかな
それともまだ


死に足りないのかもしれないね