やもり




                         日が暮れた玄関先で
                         植木に水をまきながら
                         ひっそりと
                         闇伝いに這っていくと
                         先客が
                         プミラの葉っぱのそばにいた
                         壁をつたう
                         ちいさなやもり

                         壁はひんやり
                         気持ちがいいというにはもう
                         おなかにしみるね
                         水がかかると
                         病気になるね
 
                         夏が過ぎたというのにまだ
                         露草は群生している
                         あの味を知っている?
                         忘れないでというより
                         消えない染みをつけて欲しい
                         夜露みたいにまるまって
                         消えてゆくおもいで

                         見つめあう
                         あたしとちいさなやもり

                         交尾したい と思った途端に
                         逃げちゃった