経血



ぱんつのなかで
経血はみるみるとあふれた
低血圧のからだのどこに
こんな余分な血があるというんだろう
うつくしい鮮血が
わたしを捨てて出て行った
わたしを見限って出て行った
便所のほうがまし
とでも言いたげに
舐めたいほどの鮮血が
わたしからほとばしり出て行った

寝ているわたしは
たとえば一本の安価なワインであった
目が覚めて
安価なワインの底が抜ける

ほとばしる血潮が
わたしを蹴破って出て行った
いつのわたしを支えたんだろう
からだを何周まわったんだろう
わたしのことを全部知っているんだろう

要らない血とは思えない新鮮さで
凝視する目玉まで赤く染まりそうな勢いで
飲み干したいほどの血しぶきが
わたしをさんざんあきらめて出て行った
いいえ

わたしをさんざん愛して 
出て行った



ゴミとして捨てられた第十二週までの胎児は
ゴミ焼却炉のなかですぐに蒸発した
いっせんちにも満たない赤黒いかたまりなら
母猫のように食べてしまえたらいいのに