追伸



                       不良品だと思っていた部分が
                       今は わたしを生かしている
                       そんな気がする
                       剥がしきれない殻を
                       カリメロみたいに
                       まだ被ってはいるけれど
                       ちゃんと歩いているもんね
                       だいじょうぶ
                       こなごな島の帰り道
                       ぺツェッティーノは胸をはって
                       こう答えたよ

                         ボクはボクなんだ!
                         一個も足りないものはなかった
                         ボクという完成品だったのさ

                       ほら、ここで
                       いつも泣きたくなる
                       ペツェッティーノはわたしだから
                       弱くていじけのみそっかす
                       こなごなの手で 
                       自分をつくる

                         ボクはボクなんだ!
                         ボクはボクなんだ!
                         一個も足りない部品はなかった
                         ボクという完成品だったのさ

                       不良品だと思っていた部分は
                       そのかたちのままで
                       もっとも重要な
                       わたしの大切な部品だったのさ
                       そう確信する日を
                       夢にみて

                       ついしん
                       あなたの詩を読んで
                       わたしはわたしの荒地を肯定する
                       あなたの詩を読んで
                       わたしはわたしの汚水を肯定する
                       弱くていじけのみそっかす
                       わたしはわたしを肯定する
                       肯定したいよ
                       ねえ、カリメロ
                       ねえ、ペツェッティーノ
                       わたしが詩をかく理由は
                       きっとここにある

                       プリシラ
                       いつも傍にいて
                       こなごな島に
                       連れて行って






                                                       レオ・レオニ 作
                                                       谷川俊太郎 訳
                                                       「ペツェッティーノ」より引用・参考箇所あり