夜の雲





                        晴れた夜空を
                        ひくく流れる白い雲
                        わたしは思わず足を止め
                        一月の路上に立っている



                             しずかにひとしれず
                             夜空を渡る白い雲
                             わたしの目のなかの夜の果てまで
                             渡っていってください



                        もしもわたしが
                        雲に生まれたら
                        きっと晴れた夜空を
                        泳ぐだろう


                                   昼間の青空は まぶしくて
                                   夕焼けの茜は せつなくて


                          けれど この
                          滲み広がる薄紺の空は
                          ただ ただ 開け放されているようで
                          とわにつきぬけているようで
                          凭り掛かる思いが
                          なにも ない



                        この世の結び目のすべて解かれた
                        その静寂のなかを
                        こころの結び目もすべてほどいて



                            星に目隠ししながら
                            誰にも知られず
                            流れてゆこう



                        どこまでも 遠く
                        とおく 
                        どこまでも
                        遠く



                              地上の灯りを 眺めながら
                              ひとびとの 眠りのうえを
                              ゆうらり
                              ゆうらり
                              渡ってゆこう