ザラメ



               ザラメの焦げたこうばしい匂いが
               ふいにしてきたな と思っていたら
               突然
               あなたを欲しくなった

               線路脇の高架下は
               晴れた日もどこか乾かないところ
               スピードを上げてくぐり抜ける
               誰にも見透かされないうちに

               信号が赤に変わって
               鼓動はシャツの下で速くなる
               重い曇天のしたたりそうな夕暮れ
               その肌のかげりもかげりの裏のヒミツも
               もう知ってるよ
               知ってるの
               青になるのを待つ間
               ベルを小さく鳴らしてみたり

               粉砂糖のような子供の頃
               グラニュー糖のような少女の頃
               そして今
               ザラメのような時が訪れて
               紡げる魔法の糸はあまくやわらかい

               くだりの坂道はでこぼこで
               ブレーキをかけなくてはいけないのに
               後ろの荷台でまたひとつ
               玉子にヒビがはいる
               白身が漏れる